日本的情緒を感じさせる風景を思い浮かべた時に出てくるものの一つが五重塔ではないでしょうか? 日本には国宝または国の重要文化財に指定された25の五重塔、56の三重塔があります。最古の塔は法隆寺のもので8世紀前半に建立されました。高さは約32メートルです。日本で一番高い木造の塔は東寺のもので、高さは約55メートルです。1644年に徳川家光の寄進により建立されました。 仏塔の歴史は古代インドにさかのぼります。紀元前3世紀ごろストゥーパと呼ばれるお釈迦様の遺骨を祀る施設として造られ始めました。それは大きなお碗をかぶせた様な形をしていました。それが中国、朝鮮を経て日本に伝来するうちに五重塔になっていったのです。当初はまだ仏像は作られていませんでしたのでこれがまさに崇拝の対象でした。ストゥーパの上にある傘のようなものは釈迦の過去、現在、未来を示していて、それが五重塔の頂上部分に変化したようです。これを相輪と呼びます。仏像は1世紀末頃から見られるようになりました。そして徐々に五重塔に替わり重要な崇拝の対象となっていきました。後には、五重塔内部には遺骨ではなく仏像や経典を置くところが増えてきました。 ところで、これらの五重塔や三重塔は木造ですが何百年もの長い間台風や地震に耐えてきました。その強さの秘密はどこにあるのでしょうか? そのひとつとして材料同士が強固に結合していない柔構造が挙げられます。そのため塔は各層がバラバラに独立して動くので全体の重心は比較的安定しています。また高い建物を支えるために多くの梁や枡形の木組みを使っています。心柱は塔のバランスを保つ役目を果たし、左右の揺れを緩和しています。おもしろい事に日光東照宮の五重塔の心柱は4階からぶら下がっていますし、宮島の五重塔の心柱は1階までとどいていません。現代の高層ビルの耐震技術として五重塔のメカニズムを実際に応用したビルも多くあるということは興味深いことです。 参考文献 ウィキペディア |