日本酒には昔から人々を清める力があると信じられ、祝い事や儀式には欠かせない日本特有のアルコール飲料である。
≪日本酒の特徴≫
日本酒は米から造られるアルコール分15から20%の醸造酒である。ワインやビールも醸造酒であるが、ワインの場合、原料のブドウそのものに「糖」が含まれているため すりつぶせばそのまま発酵過程を経てアルコールに変化する。日本酒の原料「米」には「糖」が含まれていないため、デンプン質を「糖」に変えるための糖化と発酵が同時に行われる。この高度な製造法は「平行複発酵」と呼ばれ、この複雑な製造工程を経ることにより独特の「うまみ」がかもしだされる。「うまみ」のもとアミノ酸の含有比率を比較すると、ビール:1に対してワイン:3、日本酒:8である。
≪日本酒の歴史≫
稲作が始まった二千数百年前には、米を原料とした酒造りがすでに行われていた。当時の酒造りは米を口に入れて噛み、唾液によってデンプン質を糖に分解し、野生酵母によって発酵させものであった。紀元前3世紀の『魏志倭人伝』には、人々が「歌舞飲酒をなす」という日本の酒に関する最初の記述がある。奈良時代初期の『播磨国風土記』には麹を使って酒造りをしたと見られる記録が残っている。奈良時代に律令国家が整うと、酒は稲の実りを象徴するものとして神事などに欠かせないものとなり、酒造りは国家によって管理された。平安時代に律令制が形骸化し各地に荘園ができると、酒造りは次第に荘園主である寺社内で行われるようになった。室町時代になると、麹が庶民の間にも流出し、広く酒造りが行われるようになった。
≪日本酒の造り方≫
酒米玄米・米粒やその中心部の心白が大きく、たんぱく質が少なく吸水性が高い酒造好適米
↓ ←精米(酒の種類によって精米歩合が違う。(精米歩合50%以下は大吟醸)
白 米
↓ ←洗米・浸漬・蒸し
蒸 米・・蒸米は麹用、酒母用、醪用の3つに分けられる
↓ ←放冷・製麹(蒸米に黄麹菌を種付けして繁殖させる)
米 麹 ※麹菌に含まれる酵素が米のデンプンを分解してブドウ糖に変える
↓ ←酒母造り(蒸米・水・酵母を加える)
酒母(しゅぼ)
↓ ←三段仕込み(酵母が無理なく発酵できるよう米麹・蒸米・水を3回に分けて加える
醪(もろみ)
↓ ←上槽(圧縮機で醪を絞る。絞った後に残る固形物が酒粕)
清 酒
精米から約60日をかけて日本酒は誕生する。
≪日本酒の雑学≫
日本酒は万能調味料・・・日本酒には味や香りの成分が約200種類も含まれているといわれている。この成分から生み出される微妙な風味は、和洋中を問わず料理の隠し味として最適。
日本酒の美容効果・・・日本酒の原料のひとつである麹菌には、シミやほくろの原因となるメラニンの生成を抑える美白・保湿効果がある。さらに細胞の老化を防ぎ活性化させる働きもある。
日本酒の健康効果・・・日本酒にはアルコールのほか有機酸、必須アミノ酸、ビタミン、ペプチドなど100種以上の成分を含む。それらは骨粗しょう症の防止、アレルギー抑制、血圧の上昇抑制、ボケ防止などの作用があると分かっている。「酒は百薬の長」という言葉は本当なのである。ただし、くれぐれも飲みすぎにはご注意を!
参考文献:地酒の旅(JTB) 日本酒入門(ダイアモンド社)
参考ウェブサイト:日本酒造組合中央会HP
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